赤は血の色 黒は罪の色
この羊蹄見せられちゃあさ。 とっさに京極だもん。 ここで真狩とか選んじゃあ素人。 ね。」
「いやいやいやいや、これだけ純白の中で画がいただけるチャンスなんてのはアナタ、十年に一度級ですよ?」
「つうこたもう最初で最後か? ジジイ永くはねえだろからなあ・・・・・・」
ルナさんがマイルドリンダなんて言ったけども、リンダちゃんはスーパーハードリンダちゃんだわ。
ほんっと、断固として低速嫌いだよねえ。 20そこそこでしか走ってない時のあの敗北感。 屈辱感。 ありえないもん。
30越えてようやっと生きてるカンジだっつうもんなあ。 これじゃジジイ、ホントあと10年は保たねえわ。」
「あのー、リンダさん? あれ、♀ばっかですから違うかと。 色に反応してんだとしたら、ちょとコワイ・・・・・・」
貧乳やペタンコならうらやましがるだろうけどもよ、アタイはカンベンだぜ、700x26c、パンク修理部のみ28cってのは。」
「むーん、やっぱしちゃんと縫わさってないのは却下ですか。 しゃあないなあ、出費は痛いが買い替えますかね。」
「うーん、まあ、楽っちゃあ楽なんですが・・・・・・・・・」
「その、楽、ってのが選択としてアリなのか? ローディーとして、楽、はイイ事なのかよ?
いや、プロならわかるぜ。 楽に儲かるならそっちのほうがいいさ。 でもテメエ、アマチュアだろ? しかも人と競わねえだろが?
好き好んでつらい思いしたくて、イチバンつらい組み合わせってコンセプトでアタイを組んでんだろが?
だったら最後で日和るなって。 たとえ数字で遅かろうと、感性で速いのを組むべきでねえの?」
「むーん、そおなんだよなあ。 26で得られる快適は、果たして望むべきものなのか? リンダの存在価値と折り合いがつくのか?
23のキレキレのタイアのほうがキャラ立ちするよなあ。 いっそヴェロフレ・・・・・・・・」
「ちょーっと待ったあ! 三人揃ってクリテリウムかよ? それ、つまんねえだろが!」
「でもなあ、コンチ、シュワルベと履いて、バキューンが足りないんだよなあドイツもんは。 タイアは甘美であってほしい。
もうちょいと考慮の余地があるかも知れんのねんのねん。 悩もう。
むむむのむ。 アタイのタイア、アタイのタイア、アイタタタ・・・・・・・」
「テメエはマドンドマーネエモンダかーっ!!」
「わわわわっ、ルナさんっ!! リンダの怒りに油を注ぐような言い方はっ!!!」
「ほっほーお、面白え。 調子こいた年増がこのアタイに喧嘩売ろうってのか? いーだろう、好きに遊んでくるがいいさ。」
「あのさあルナさん、直前に誰が絞ったと思ってんの? 名高き秒殺の女王、天下のリンダちゃんですよ??」
「そりゃさやかさんだから出来る業なのよ、リンダとおんなじ肉使おうとしたら売り切れてるに決まってるじゃん!
だからラムさんが言ってたでしょっ! あの三人を甘く見てたら泣きを見るって!!」
速く走らねば!を強迫観念にまで高めるリンダの一途さは、やっぱ飛びぬけてるっつうコトなんだなあ・・・・・」
「高速域までストレス無く連れて行く性能より、高速域でないことがストレスと化す性格、ってコト?
いやー、ワケワカだけどなんか勝ち目が無いようなあるような・・・・・・・」
そんでもこのロケですもん、最後の一滴まで使わんことにはモッタイナイ。 ルナさんを探りながら回し、踏み、もがき、漕ぐ。
喜茂別から京極への最後のスプリントポイント、足は終わってると知りながら、ファイナルトップに叩き込み、フルもがき。
「ああっ、あかぁんっっ!!」と叫びながら、がぶる! そしたら、限界だったクランクが1.5回転だけ、【 落ちた 】 。
これだ。 これだもん。 これだからロードはやめられん。 これでもかと己をいじめ抜き、限界まで踏み抜き、
その血の最後の一滴まで捧げ尽した果てに、クランクが1.5回転だけ、落ちた。
その1.5回転に感じる至福。 ロード以外の何で感じることが出来るってんだい?
はっきりとわかった。 この世界には、舗装道路という名の、果てし無き桃源郷がある。
そして、その甘美さをとことんまで味わい尽くせる唯一の道具が、ロードバイクなんだ。
スポーツカーでも、スポーツモーターサイクルでも、スポーツランニングシューズでも辿り着けない境地まで導いてくれる、
地上で最も美しい乗り物、ロードバイク。 クランクが落ちた、そのたった1.125秒を至福と感じさせてくれる乗り物。
まったくもってグレイトだ。 どーもありがとートシちゃんカンゲキー!!
ピース。
by denzia
| 2015-03-28 21:28