魔性のA。
「ほえ? あのー、あなたはいったいどちらさまで・・・・・???」
「あら何てひどか! あの舞踏会ではあがんに激しく濃ゆく
愛しおーたじゃなかか! ちゃんと責任とっとったとだかんと!!」
「えーっと・・・・・・あの、アリーシャちゃんでいいのかな? ラムさんが名づけてくれましたから・・・・・・・
しかし、なして長崎弁こってこてなんすか? オレにはこれが長崎弁なんだかどうかもわかんないんですけども・・・・・・」
「そりゃあうちはオランダの生まればいもん、日本の窓口は長崎でっしょ?
言葉は変換ソフト頼みになっとけんばってん、キャラ立てのためには仕方なかわ。」
「いやいやいや! 夕べオイラがインナーケーブルのルーティングしくじったせいで、Fディレイラー使えないでしょ!
何をこんなドラマチックに走り出してるんですかっ!」
「げなお店が開くの待っとったら動くの昼になっちゃうじゃなか!
ホームの朝練峠とやらはインナーがあれば充分でっしょ! 寝起きの一発、バキュンと決めまっしょ!
うちの官能的な走りなら、カメラさんちゃこんくらいの絵は出したくなるやろうね!」
「あら、ルミ姉ちゃんの記録はあと20秒も速かの? さすがねー、まっとがんばらなくちゃ!
でんアナタ、新妻との初夜で舞い上がる気持ちはわかるばってん、よか歳して最高心拍190だなんて! 腹上死しちゃおるよ!」
「とにかく店でインナーケーブル買って這わしーの、バーテープ巻きーの、ボトルケージつけーので、走る体裁は整いましたです。」
「さ! そいではハネムーンにまいりまっしょか!!」
「うっわ、たーまんねぇわ、この陽光の下でのダークなぎらつき!! こりゃ塗りでは絶対出ない、A-limitedな味だよな。
あー、初期型残ってて良かった! こういう悪運ってのは、日々自転車バカ道を精進してないと付いて回らないよなあ。」
「そしてまた、コーラスが似合うこと似合うこと! この差し色の赤のないシブさが、アリーシャちゃんを引き立てるナァ!
こうなると、ポストとステムの選択にも妥協はできんなあ。 ポジションはこれで出るとして、パーツ選択は腕の見せ所だぜ。」
「さらにはこのネオモルフェ! いやー、予想はしてたけどやっぱり虜。 ローディーとして一度は使ってみたいパーツ、BEST5に入るよなあ。
が、このバーテープはちょっとしくじった。 カブトの超薄、コットンテープみたいなんだねえ。 もっとスムースでグロッシーなのが欲しい。」
「えーっと、見てくれの話ばっかりしとらんで! 大切なとは乗り味のほうでっしょ! うちはどぎゃんかしら? お望みのヴァンパイアね?
ま、そがんゆわれたらそーけど、てしたらこんお日様ん下じゃ、一瞬で灰になっちゃおるばってんね。」
「うむむうむう、やっぱつどーむの印象とは違うもんだよなあ。 短距離猛ダッシュを繰り返した時にはキラーっぷりが際立ってて、
『ぬおおおお、これこそがリンダを求めた時に思い描いていた、夢の秒殺キラーフレームっっ!!』と感じたんだが。
本日寝起きからここまでお付き合いしてみて、思ったよりもやさしく、リンダのように覚悟を持って挑まねばならぬハードボイルドではないよね。
転がしてる分にはアルミとさえ感じさせない当りの柔らかさ。 ルミに借りたクリテリウムのしなやかさも手伝ってくれてるんだろうけども。」
「あらまあ、そいはいまどきのキャドテン対抗モデルやけん、 リンダ姉ちゃんのスポ根系武闘派アルミとはちょっと違おるわ。
でん、お気楽コンフォート風味て思われるとは心外ばいわね。」
「ところがねえ。 実にいやらしい性格してるんだなあ、これが。 流しで転がしてやると、『もー少し踏んだほうが楽しいですよ。』 と誘いかけてくる。
そんでちょいとかけちゃると、むわっと麗しさが増して、『もうちょっと、もうちょっとだけ!』 とくる。
それの繰り返しでいつの間にかコンバットスピード。 そっから多少上りなんてあろうものなら即座にビッグファイアー!
何ちゅうもがかせ上手。 アヘアヘウヒハ、アヘウヒハ。」
「何ね、うち、えらくはしたないおなごみたいな言われようね!
アナタが貧脚のくせに後先考えず欲望のままに突っ走っとるだけじゃなかと!!」
「いやメンゴメンゴ、かなりな褒め言葉のつもりだったんだけんども。 いやしかしだ。
走り出すまではリンダの座を脅かすモノだと思ってたんだが、これはルミと勝ち負けしそうなイキオイだ。」
「あらいやたい。 じゃあとりあえずは、HANAZONOの出走でん狙っちゃおうかしらん?」
「むんー。 それはどうかなどうだろか。 あの魔法のクライムの牙城を打ち崩すのは生半可じゃないからなあ。
でも、それを考えてしまうってのは、そういうポテンシャルの持ち主だってことだよなあ。
やはり魔性のA。 恐るべし。」
「アナタはまぁだまぁだうちの使い方がなっとらんけんね。
気づけばもう、後半月。 どれだけ愛ば深めらるっかがキーポイントかしら。 いよーし、がんばらなくっちゃ!!」
さあアリーシャはHANAZONOの出走権をルミから奪っちゃうのか? 恐ろしくもあり、楽しみでもあり・・・・・・
by denzia
| 2015-07-14 00:17